相続により建物の所有者となった場合、その建物が空き家となる可能性があります。
人が住んでいる家であれば、火災や風災・水災などの自然災害や盗難、破損・汚損等さまざまな事故による損害を補償するために火災保険に加入しますが、人が住んでいない空き家に火災保険は必要ないのでしょうか?
また、相続前に火災保険に加入していた場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
まず始めに、空き家に対する火災保険の必要性について見てみましょう。
転勤等により自宅が空き家になる場合
転勤中の空き家は、転勤期間が終了すると住む予定の自宅となるので、火災や自然災害が起こった時の再建築に備えておく必要があります。
相続で取得した古家が空き家になる場合
相続した空き家は、資産性が低く、今後も住む予定はありませんが、火災や自然災害で倒壊すると、残存物の取り壊し費用や撤去費用が発生しますし、第三者が被害を被る可能性もあり、それらの費用を確保する必要があります。
空き家は、人が住んでいる家に比べて清掃やメンテナンスの頻度が低く、管理が適切に行われにくいため、空き家となる期間が長くなるにつれて様々なリスクが増します。
不法侵入者による火の不始末から起こる火災や、台風による建物の一部の損壊や屋根の損壊、放火の発見が遅れたことによる近隣への被害拡大などがそれにあたります。
つまり、空き家でも、建物の資産性の有無にかかわらず、火災保険に加入する必要があるという事です。
では、保険契約上の「空き家」とはどの様な位置づけであるのかを解説します。
住宅物件と一般物件
火災保険は、保険の目的となる建物の所在地や構造、用途によって、
加入できる保険の種類・保険料が異なります。
個人の建物は、一戸建てやマンションなど住居専用として使用する住宅物件と店舗や事務所など
住居以外に使用する一般物件に大別できます。
住宅物件 と 一般物件 では、補償内容が同じであれば、保険料は一般物件の方が高くなります。
では、空き家は、どちらに分類されるのかをご説明します。
本来、空き家は住居専用の建物ですが、住んでいる人がいない場合の保険契約上の考え方では居住用の建物とみなされず、店舗や事務所と同じ扱いとなり、一般物件として加入するのが一般的になります。
但し、長期間の放置による老朽化や不朽など、管理が適切に行われていない場合は、火災保険に
加入できないことがあります。
また、空き家を住宅物件として認められる例もあります。
例えば、転勤により一時的に空き家になってしまう場合、相続で取得した空き家を家族や親族が
寝泊まりして定期的に管理している場合、別荘の様に季節的に住居として使用する建物などです。
つまり、住宅物件として判断されるかどうかは、今後も住居として住む予定があるか、住居としての機能が維持されているかがポイントと考えられます。
保険会社によっては、家財が常時備えられていることを住宅物件として取扱う条件としているところもあります。
火災保険への加入時は、ご自身の物件がどちらの種別になるかは保険会社の引受基準や空き家の状況・管理状態によって異なるため、自己判断せずにまずは相談してみましょう。
補償内容について
火災保険の取扱いが一般物件となる事の多い空き家ですが、補償内容については住宅物件と大きな違いはありません。
物件の種別によって、加入する火災保険の種類(保険商品)が異なるだけです。
保険の種類は2つに大別でき、火災や風災のみを補償するシンプルなタイプと、基本補償となる火災や風災に加え、水災、日常災害(盗難、水濡れ、建物外部からの物体の衝突など)、偶然な事故による破損・汚損など、幅広く補償するタイプがあります。
ご自身の必要な補償内容に応じて選択しましょう。
また、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害は、火災保険では補償されないため、地震保険の加入を検討しましょう。
但し、地震保険は、住宅物件扱いとなる空き家には火災保険にセットして加入できますが、
一般物件扱いとなる空き家では加入できませんのでご注意下さい。
第三者に対する補償について
空き家の所有者は、当該物件を管理する者として第三者に対する賠償責任が発生します。
例えば、台風による強風で建物の塀が倒壊したり、屋根の一部が飛んだりして、近隣の家に損害を与えたり、人にケガをさせてしまったりするケースです。
このような法律上の賠償責任を負う場合への備えも必要です。
空き家が住宅物件として扱われる場合は、個人賠償責任保険を特約としてプラスします。
一般物件として扱われる場合は、施設賠償責任保険をプラスしましょう。
空き家も住宅同様に、補償内容を理解して適切な保険に入る事をお勧めします。
最後に相続した空き家に火災保険契約期間が残っているケースをご紹介します。
相続した空き家に 保険契約期間が残っている場合
前述した通り、人が住んでいる建物は住宅物件、住んでいない物件は一般物件となり、
空き家については保険会社によって住宅物件とならず、一般物件として火災保険に加入する必要がある場合があります。
このため、「両親が掛けていた火災保険の保険期間がまだ残っているから」といって、
契約者の名義変更だけ済ませてそのまま継続していると、正しく保険に加入していないことになる可能性があります。
実家を相続して誰も住まない場合は、保険会社の担当者などに状況を説明して、適切な保険に加入するようにしましょう。
両親の家屋の相続人が複数の場合、共有名義で登記することは少なくありませんので、この場合も火災保険に加入する場合、注意が必要です。
今回は相続した実家の火災保険を例に問題になるケースを紹介しました。
しかし、保険契約に限らず、思い込みで大丈夫だろうと思っていると大きな間違いを起こしている場合があります。
些細なことでも生活の変化があった場合は、専門家に相談して間違いがないか確認して、万が一の時に慌てないようにしましょう。
空き家といっても、それぞれの理由でいろいろな状態の空き家があるため火災保険の取扱いは異なりますが、火災保険には加入しておきましょう。また、第三者への賠償責任に備えた保険にも併せて加入しておくといいでしょう。
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