空き家の緊急修繕の必要性
相続手続きを行い空き家の所有者になると、当該物件の管理義務が発生します。
また、その空き家を起因として第三者や近隣住民が被害を被った場合、法律上の損害賠償責任が発生する場合もあります。
昨今の空き家問題で多く見受けられるのが、損害を放置するなどの管理義務を怠った事による賠償問題です。
まずは、空き家が被害を受ける原因として多いケースをご紹介します。
空き家が被害を受ける原因として多いケース
1. 台風・大雪・豪雨などの自然災害による被害
空き家は居住建物より建築年数が古い場合が多く経年劣化も進んでいる為、自然災害による被害を受けやすい傾向にあります。
台風による被害で多いケースは「風災」による物で、「屋根が飛ばされた」「飛来物により外壁がへこんだ」等の事例が多く見られます。
また、雨量や立地によっては「水災」による床上浸水などの被害も考えられます。
2. 老朽化による被害
人が住んでいる家は、ドアや窓の開閉による室内の空気の入れ替えが自然に行われている状態ですが、人の出入りがなければ部屋には同じ空気が停滞したままの状態となり湿気によるカビの繁殖や、シロアリ・害獣などが繁殖する原因になります。
また、長期に渡り水道が使われない状態が続くと、排水管の水が蒸発してしまい汚臭や虫の発生を誘発します。
3. 第三者による被害
空き家に関して最も懸念される問題の1つに、鍵や窓ガラスを壊して不法侵入する「住み着き」や、「空き巣」が挙げられます。
中には、家財道具を破壊したり、ゴミを放置して、部屋を不衛生なままにする悪質なケースも見られます。
そのほか、タバコの火の不始末や放火による火災発生も考えられます。
このように、空き家は放置しているだけで多くの危険性を秘めています。
それでは、上記の様な被害を放置した場合に想定されるケースを幾つかご紹介します。
空き家被害を放置した場合に想定されるケース
1. 建物の老朽化と大型台風
老朽化して壊れた空き家を放置した場合、最も怖いのは飛来物です。
老朽化が進んでいる事もあり、強風により飛散する可能性が非常に高くなります。
大型の台風が通過した際には、強風で巻き上げられ、周辺に散乱した太陽光パネルの衝撃的な画像がニュースにもなっていました。
建物だけでなく、北風や強風による飛散物が通行人に怪我を負わせたり、近隣の住宅を破損させるなどの被害が及ぶ可能性もあります。
2. 水災によるシロアリの発生
水災により浸水していても、定期的に管理をしていなければ気が付かないケースも多く、「建物の耐久性が落ちても自分が住んでいる訳ではないから問題ない。」と思うかもしれませんが、一番深刻な問題はシロアリの発生です。
湿った土台などの木部を好むシロアリが発生すれば、近隣の住宅にも被害が広がる可能性があり、苦情やクレームの発生が考えられます。
3. 小動物や害虫の発生
台風や地震で破損した箇所や、屋根のずれた瓦などから小動物や害虫が侵入してくる可能性があります。
そのまま棲みついたり、そこで繁殖した動物たちが周辺の敷地や家屋に侵入して、二次被害を発生させる恐れがあります。
また、その糞尿は臭いや衛生面でも近隣の方が大きな迷惑を被ることにもなるでしょう。
上記で挙げた例の他にも、被害を放置した事による近隣からの相談や苦情は多く報告されています。
では、損害を放置せず早期に発見し、必要な修繕を実行する為にはどの様な対策を取ればいいのか解説します。
被害対策
1. 火災保険の加入
自然災害による被害の修繕費は、100万円を超えるケースも多く、何かしらの対策をしていないと、修繕費をご自身で負担しなければならないケースが考えられます。
そこで必要になるのが「火災保険の加入」です。
通常の火災保険は、住居としての価値がある建物の損害を補償するために加入します。
しかし、逆に空き家ならではのリスクが発生することも考えられます。
たとえば、空き家が火災により全焼した場合、所有者は焼けてしまった家の残存物を片づけたり、撤去したりしなくてはならず、そのための費用が必ず発生します。
また、前述した通り、台風などで廃屋のようになった空き家の屋根が飛んで近隣の家を壊した、人を怪我させたとなると、所有者として損害賠償の責任が発生します。
預貯金で賄えないような損害を与えてしまった場合は保険で備える必要が出てくるのです。
以上を踏まえて、必要な保険の内容を整理すると「建物にかける保険」と「第三者への損害を補償する保険」の2点が挙げられます。
では、それぞれの内容を詳しくご説明します。
1-1. 建物にかける保険
火災保険は建物の用途によって保険料が変わります。
建物に人が住んでいれば住宅として火災保険に加入できますが、人が住んでいない「空き家」は火災保険の契約上「住宅」とはみなされないのが一般的です。
多くの保険会社では「一般物件」として店舗や事務所と同じような扱いで保険契約を行うことができますが、住宅に比べて保険料が割高になる可能性があります。
また、建物が廃屋のようになっているなど、管理状態によっては火災保険そのものが契約できない場合もありますので、ここでも「適切な管理による状態維持」がポイントになってきます。
補償内容はプランにより異なりますが、最低限必要な内容は「火事」「風災・雹災・雪災」になります。
また、「盗難」「外部からの飛来物」「水濡れ」なども出来る事なら付けておきたい補償内容になります。
1-2. 第三者への損害を補償する保険
賠償事故の解決に必要となるのが施設賠償責任保険です。
個人賠償責任保険は自分や家族が物を壊した、あるいは人を傷つけた時の保険ですが、施設賠償責任保険は「空き家」の所有者が管理の不手際で、物を壊したり人を傷つけたりした時の保険です。
特に他の家を壊してしまった、人に大きなけがをさせてしまったといった場合は、損害賠償が高額になるおそれもあります。預貯金で賄いきれない損害には保険で備えることが必要です。
この保険は建物の保険に付ける「特約」扱いとなりますので、保険契約の際に選択しておけば問題ありません。
2. 管理の委託
空き家を所有したら一度外部委託を検討される事をお勧めします。
管理を委託すると、費用はかかりますが管理の負担が大きく軽減され、委託にかかる費用以上のメリットを得られる可能性も高くなります。
特に移動の負担が大きいケースでは、移動が無くなる事も大きなメリットになります。
また、基本的にはサービス内容が選択できる様になっており、自分に合ったプランを選んで管理をお任せできます。
建物についての知識を持った管理者に管理をしてもらえるため、任せて安心できる他、月1回は必ず管理を実施する為、前述した様な被害や異常の早期発見にも繋がります。
さらに、管理業者に委託した場合「管理看板が出る」など、権威性がでる場合もあり、個人で管理するよりも犯罪抑止効果などに大きな効果を発揮します。
この様に、空き家を取り巻く問題はご自身が想定されているよりも多く複雑ですが、それを一手に任せられるのが「管理委託」という事になります。
まずはご自身の現状と要望を含めて管理会社にご相談される事をお勧めします。
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